『何億円積まれても亜細亜大野球部時代には戻りたくない』
これは引退後の著書で元阪神タイガースの赤星憲広さんが語っていた言葉です
赤星さんが高校卒業後に進学した亜細亜大学野球部はとにかく【地獄】だったそうで、赤星さんいわく
『何億円積まれても大学時代には戻りたくない』
『あそこに入った初日から最後の日まで良かったと思った事は一度もない』
『あんな所だと最初から解っていたら絶対に入学しなかった』
『野球部のグラウンドの最寄駅を降りると悲鳴が聞こえる』
などなど、これが本当に大学の野球部なの?と恐ろしくなるようなエピソードが出るわ出るわ…
この赤星さんのいう亜細亜大学野球部の厳しさが本当なんだろうなと思うのが退部者の多さで、あの大阪桐蔭の四番打者(田端良基・近田拓矢)が2年連続入学即退部した事も野球ファンの間では話題にもなりました
ちなみに、田端良基選手と同学年で、共に亜細亜大学野球部への入部が内定していた中京高校の吉川尚輝選手も亜細亜大学野球部入部⇒即退部です…(その後中京学院大学に入学⇒巨人ドラフト1位)
井端和弘の亜細亜大学野球部の思い出が凄まじすぎる…
吉川尚輝選手は再入学した中京学院大学でブレイクし、見事に巨人からドラフト1位指名されるまでの選手になったのですが(巨人ファンの間からは吉川は亜細亜辞めて良かったとの声も…)その吉川選手が入団当時の巨人では、亜細亜大学OBの井端和弘さんがコーチをしており、その話の流れで、記者が井端さんに
『亜細亜大学はそんなに厳しいのか?』と質問。それに対して井端さんは
『亜細亜は大学の野球部で一番厳しいのは間違いない。つまり日本一厳しい』
という返答をしたそうで、そんな井端さんが語る亜細亜大学時代の思い出もまた凄まじいものなんですよね…
※ これ、漫画みたいな話ですけど、井端さん本人が語った実話です笑↓
■ 練習
グラウンドで嘔吐は日常茶飯事で、嘔吐してもそれを片付けてすぐに練習再開■ 寮生活
1年生は同部屋の上級生が戻る際、正座で出迎え直ちに靴をそろえなければならない。
「ドアが開いてから動いたんじゃダメ。だからずっと正座で待ってないと」
1、2年はジーパン禁止。ジャンパーは腰上までで、ケツが隠れるのはダメ
電車で座るのも禁止
ある日、前後の車両に先輩がいないのを確認して『よっしゃー』と座ったら、先輩が踏切に立って見張ってた
マジで怖かった。電車を降りてから寮に電話して、先にみんなに『すまん』と謝った
失態を冒せば同級生の連帯責任
「暗幕の張られた真っ暗な部屋で正座。で、順番に…
だんだん悲鳴が近づいてくる恐怖たるや…
俺らの1コ下、赤星の代が20数人、全員逃げた
赤星らは結局舞い戻ったが、またすぐ逃げられても困るから、しばらくは優しく接した
亜細亜大学野球部はまさに軍隊式野球部
子供の頃から鍛えに鍛え抜かれ、全国の野球名門校で徹底的に野球をやって来た猛者たちであっても一瞬で逃げ出す環境で、以前から『軍隊式野球部』などと言われ日本一厳しい野球部だと言われている亜細亜大学野球部
かつて江川卓さんの著書の中で、当時の法政大学野球部の練習や、上下関係の強烈な厳しさなどが書かれていたのですが、その著書の中でさえ
『それ以上に東都の亜細亜大学は滅茶苦茶過ぎて、選手がどんどん寮から脱走していた』と書かれていたくらいですからね…
しかし、ただ厳しいだけだはなく、この亜細亜大学硬式野球部、主な実績だけでも
東都大学リーグ・優勝25回
全日本選手権・優勝4回/準優勝3回
明治神宮大会・優勝5回/準優勝2回
などなど…凄まじい実績を誇る、まさに日本の大学野球界の頂点に君臨している超名門の大学野球部なんです
しかもプロ野球にも数多くの優秀な逸材を輩出している大学として知られていますからね(亜細亜大学野球部OBのプロ野球での成功率、本当に凄いです!)
まあ当然ですが、これだけのチーム実績を残し、素晴らしい選手を輩出するだけあって、相当の練習が行われています
以前赤星憲広さんがテレビ番組で言っていたのが
■ 1500メートルを毎日10本走ってから野球の練習が始まる
■ 朝8時半からグラウンドの草むしり、9時から練習が始まり、授業のない日は20時までひたすら練習。休日は数ヶ月に一度あるかないか程度。休みの記憶はほとんどない
とにかくこんな感じで本当に練習もきつかったらしく、更に輪をかけて寮生活も厳しかったようで、練習より寮生活の厳しさで円形脱毛症になったり、脱走する同級生もかなりいたそうです。恐ろしい…
元オリックスのパンチ佐藤さんやヤクルト監督の高津巨吾さんら亜細亜大学野球部OBが以前、亜細亜大学野球部の寮生活がいかに厳しいかというのを、朝の朝礼の再現を交えて伝えてくれる番組を見たことがあったので、赤星さんの大学時代の地獄も結構リアルに想像出来ました
さらに、本当の話かどうか定かではありませんが、後にドラフト一位でプロ野球に入るある投手が試合で不甲斐ないピッチングをした事でコーチが激怒
ホームベース付近でぶん殴られ、後ずさる投手をさらに殴打
さらに後ずさる投手を追いかけ殴り続けた挙句、最後には2人がバックスクリーン下まで、殴り殴られでたどり着いていたという話もありました(この殴られた投手、与田剛さんか阿波野秀幸さん説が濃厚です。中日では監督とコーチで再びチームメイトになられました)
↑与田剛さんと阿波野秀幸さん。亜細亜大学時代は阿波野さんが1学年先輩です。与田さんが先輩にコーチを依頼するという事は大学時代、共に地獄を耐え抜いてきた強い絆や信頼関係があるのでしょうかね
盗塁王赤星 盗塁失敗ボコボコ事件
話は少し戻りますが、赤星さんが亜細亜大学野球部に入部したのは、地元愛知県の中京大学のセレクションに不合格となり、本人曰く『拾ってもらった』事がきっかけでした
盗塁王赤星 盗塁失敗でボコボコに
本命の中京大学のセレクションに落ちてしまった赤星さん、愛知県の名門大府高校のレギュラーとして2度の甲子園出場と、高校野球雑誌にプロ注目選手として小さくではあるものの名前が載るほどの知名度があったおかげか、その後亜細亜大学からお誘いを受けるのですが、なんと入学に関しては一般入試組と同じ待遇での入部だったそうです
その野球部の一般入試組の練習初日。きっちり指定の日の指定時間に練習に参加したにも関わらず、先輩から「お前ら今頃ノコノコ来やがって!」と初日から説教ではじまり…
入部3日目にたまたま怪我人の穴埋めで代走出場した試合で、なんと一塁牽制アウトを喰らってしまい、夜中に寮で先輩から『もう試合に出るな』と説教
それでも出場させられた次の日の試合で、今度は盗塁失敗をしてしまい先輩にボコボコにされたというエピソードは、笑ってはいけないのになぜかクスッと来てしまいました笑
まあそれでもそんな地獄の4年間を乗り越えたからこそ、あの小さな体で あれだけの活躍が出来たのでしょうね
精神力も相当鍛えられ抜いたはずですし…
赤星さんいわく、大府高校から東都大学リーグへの進学は赤星さんが第一号だったらしく、関係者の期待や後輩の今後の進路、そして東京まで進学させてくれたご両親のことなど、まわりに迷惑をかけてはいけないというその気持ちだけで、地獄を耐え抜いたそうです…
山崎康晃が語る 亜細亜大学野球部の恐怖と地獄の練習
2015年、亜細亜大学から横浜DeNAにドラフト1位で入団した山崎康晃投手(広島 薮田和樹・ヤクルト 大下佑馬投手と同級生)
高校は東京の名門帝京高校で、2年夏・3年春と甲子園に出場し共にベスト8に進出
山崎康晃投手の投げる試合にはメジャーのスカウトも訪れるなど、高校時代から注目された投手でした
ストレートもMAX147キロを計測するなどプロ入りを期待されましたが、結局高校時代はまさかのドラフト指名漏れ
そのドラフト前に、プロ待ちでもいいから、もし指名がなければ是非ウチに来てくれと山崎康晃投手に熱心に声を掛けたのが亜細亜大学でした
しかし山崎康晃選手の実家は母子家庭で、大学に進学するのも厳しい家庭環境
実際、ドラフトで指名漏れになった時には経済的な事を考え、野球をやめて別の道に進む事も考えたそうなのですが、それでも亜細亜大学から金銭面の事は心配するなという言葉を貰い、亜細亜大学進学を決めました
帝京の山崎に亜細亜は無理と言われ…
しかし、山崎康晃選手が亜細亜大学野球部行きを決めた頃、アマチュア野球界の界隈ではこんな声がよく聞こえていたそうです
「あの帝京の山崎康晃が亜細亜の野球部に入るらしいけど…あんな気の優しい子が亜細亜入ってもすぐ辞めるんじゃないか?」
亜細亜大学野球部の練習や規律、上下関係の恐ろしいほどの厳しさは、昔から野球関係者の間ではとても有名な話で、その厳しさはもちろん山崎康晃選手本人の耳にも入っており…当時のことを本人は以下のように語っています
『お前、たぶん亜細亜やめるぞ』って言われていました(笑)。でも、そう言われるたびに『それしか道はないんです』と……」
実際に亜細亜に入ってみて、やはり厳しかったですか? そう山崎に問うと、間髪入れずに「キツイっす。絶対に普通の人では耐えられないと思います」という答えが返ってきた
「朝5時に起きて、アップをしないで5キロ走るとか…かなりぶっ飛んでいるなと思いました」
これ見てるだけでも背筋が凍りそうな緊張感がありますね…笑
普段の練習だけではなく、亜細亜大学野球部には北海道で行われる『真夏の猛練習』という恒例の合宿があるそうで、これも山崎康晃選手曰く地獄の苦しみで、『足がちぎれそうになる』のだとか…
その地獄の真夏の猛練習でも、少しでも気を抜いた態度を見せれば東京に強制送還されるなど、まさに亜細亜大学野球部の真骨頂とも言うべき厳しさが、そこにはあったようです
山崎康晃選手の帝京高校・亜細亜大学と名門野球部で鍛え抜かれた精神力は尋常ではないはずです
横浜でも1年目からクローザーを務め、あれだけの成績を残せるのもこの時代の猛練習の賜物なんでしょうね
最後に
若い頃の苦労は買ってでもしろとよく言いますが、この若い頃の苦労を乗り越えた亜細亜大学野球部OBにはきっと、常人には見えない景色が見えているんでしょうね…
個人的には、亜細亜大学野球部卒のプロ野球選手というだけで尊敬してしまいますし、あの地獄を乗り越えた凄い選手なんだなーと思ってしまいます
■ 亜細亜大学野球部 地獄の四年間を耐え抜いてプロ野球選手になったOB達
選手名 | 出身高校 | ドラフト順位 指名球団 |
---|---|---|
東山 親雄 | 高松第一 | 1966年ドラフト3位 広島 |
大橋穣 | 日大三高 | 1968年ドラフト1位 阪急 |
山本和行 | 広島商業 | 1971年ドラフト1位 阪神 |
芦岡 俊明 | 岩国工業 | 1974年ドラフト3位 ロッテ |
長谷川 勉 | 木更津中央 | 1974年ドラフト1位 南海 |
古屋英夫 | 木更津中央 | 1977年ドラフト2位 日本ハム |
大石大二郎 | 静岡商業 | 1980年ドラフト2位 近鉄 |
宮本賢治 | 東洋大姫路 | 1981年ドラフト1位 ヤクルト |
田中 力 | 育英高校 | 1983年ドラフト3位 ロッテ |
古川慎一 | 春日部工業 | 1985年ドラフト4位 ロッテ |
阿波野秀幸 | 桜ヶ丘高校 | 1986年ドラフト1位 近鉄 |
パンチ佐藤 | 武相高校 | 1989年ドラフト1位 オリックス |
与田剛 | 木更津中央 | 1989年ドラフト1位 中日 |
高津臣吾 | 広島工業 | 1990年ドラフト3位 ヤクルト |
弓長起浩 | 国東高校 | 1991年ドラフト3位 阪神 |
小池秀郎 | 信州工業 | 1992年ドラフト1位 近鉄 |
川尻哲郎 | 日大二高 | 1994年ドラフト4位 阪神 |
入来祐作 | PL学園 | 1996年ドラフト1位 巨人 |
中野栄一 | 横浜高校 | 1996年ドラフト4位 中日 |
井端弘和 | 堀越高校 | 1997年ドラフト5位 中日 |
部坂俊之 | 横浜高校 | 1998年ドラフト4位 阪神 |
松本奉文 | 崇徳高校 | 1999年ドラフト7位 広島 |
赤星憲広 | 大府高校 | 2000年ドラフト4位 阪神 |
沖原佳典 | 西条高校 | 2000年ドラフト6位 阪神 |
久本祐一 | 柏原高校 | 2001年ドラフト4位 中日 |
養父鉄 | 帝京第三 | 2001年ドラフト7位 ダイエー |
木佐貫洋 | 川内高校 | 2002年ドラフト自由枠 巨人 |
永川勝浩 | 新庄高校 | 2002年ドラフト自由枠 広島 |
吉川昌宏 | 明徳義塾 | 2002年ドラフト8位 ヤクルト |
川本良平 | 崇徳高校 | 2004年ドラフト4位 ヤクルト |
小山良男 | 横浜高校 | 2004年ドラフト8位 中日 |
松田宣浩 | 中京高校 | 2005年ドラフト希望枠 SB |
松井光介 | 横浜高校 | 2005年ドラフト3位 ヤクルト |
糸数敬作 | 中部商業 | 2006年ドラフト3位 日本ハム |
岩本貴裕 | 広島商業 | 2008年ドラフト1位 広島 |
中田亮二 | 明徳義塾 | 2009年ドラフト3位 中日 |
中原恵司 | 武蔵工業第二 | 2009年ドラフト4位 SB |
岩見優輝 | 熊本工業 | 2010年ドラフト3位 広島 |
宮崎佑樹 | 長崎日大 | 2010年ドラフト3位 オリックス |
東浜巨 | 沖縄尚学 | 2012年ドラフト1位 SB |
高田知季 | 岡山理大付属 | 2012年ドラフト3位 SB |
九里亜蓮 | 岡山理大付属 | 2013年ドラフト2位 広島 |
嶺井博希 | 沖縄尚学 | 2013年ドラフト3位 横浜 |
大山暁史 | 別府青山 | 2013年ドラフト8位 オリックス |
山﨑康晃 | 帝京高校 | 2014年ドラフト1位 横浜 |
薮田和樹 | 岡山理大付属 | 2014年ドラフト2位 広島 |
飯田哲矢 | 藤沢翔凌 | 2014年ドラフト6位 広島 |
板山祐太郎 | 成立学園高校 | 2015年ドラフト6位 阪神 |
宗接 唯人 | 神戸国際大付属 | 2016年ドラフト6位 ロッテ |
大下 佑馬 | 崇徳高校 | 2017年ドラフト2位 ヤクルト |
藤岡 裕大 | 岡山理大付属 | 2017年ドラフト2位 ロッテ |
高橋 遥人 | 常葉橘高校 | 2017年ドラフト2位 阪神 |
北村 拓己 | 星稜高校 | 2017年ドラフト4位 巨人 |
頓宮 裕真 | 岡山理大付属 | 2018年ドラフト2位 オリックス |
木浪 聖也 | 青森山田 | 2018年ドラフト3位 阪神 |
中村 稔弥 | 長崎清峰 | 2018年ドラフト5位 ロッテ |
正隨 優弥 | 大阪桐蔭 | 2018年ドラフト6位 広島 |
平内 龍太 | 神戸国際大付属 | 2020年ドラフト1位 巨人 |
内間 拓馬 | 宜野座高校 | 2020年ドラフト4位 楽天 |
矢野 雅哉 | 育英高校 | 2020年ドラフト6位 広島 |
岡留 英貴 | 沖縄尚学 | 2021年ドラフト5位 阪神 |
青山 美夏人 | 横浜隼人高校 | 2022年ドラフト4位 西武 |
松本 晴 | 樟南高校 | 2022年ドラフト5位 SB |
田中 幹也 | 東海大菅生 | 2022年ドラフト6位 中日 |
重松凱人 | 戸畑高校 | 2022年育成ドラフト9位 SB |
草加勝 | 創志学園 | 2023年ドラフト1位 中日 |
松本健吾 | 東海大菅生 | 2023年ドラフト2位 ヤクルト |
加藤竜馬 | 大阪偕星高校 | 2023年ドラフト6位 中日 |