阪神ファンの間でも自虐的によく言われている『阪神はドラフトで高校生を獲っても育てられない』という話
これ僕の周りの阪神ファンの人達も、本当によく言ってます
昔からあまりにも言われているので、他球団ファンの間でも『阪神は高卒が育たない』というイメージは結構あるかもしれませんね
そこで、この『阪神は高卒が育たない』問題、果たして本当なのか?気になったので調べてみました
阪神以外の11球団+消滅した近鉄バファローズまで、全球団の高卒育成実績も同じように調べていますので、他球団と比べて阪神タイガースの高卒育成能力はどんな感じなのか?というのも合わせて見ていただければと思います
阪神タイガースのドラフト 高卒育成の成功・失敗の基準
まず、高卒選手の成績のどこを見て成功・失敗の判断をするのかというところですが
これはスポーツ社会学やスポーツマネジメントの専門家で、広島カープのフロントで勤務経験もある、黒田次郎・近畿大学教授が提唱する、プロ野球選手の成功基準
投手:『 通算28勝以上 』
野手:『 通算427安打以上 』
この数字以上を残した選手を成功とします
ただ、投手の28勝に関しては勝ち星が付きにくいリリーフ投手の扱いが曖昧になってしまうので、ドラフト情報でお馴染みのスポーツライター、小関順二さんが提唱する1ホールド&1セーブは0.5勝案も取り入れさせていただきました
なので、今回の高卒選手の成功基準をまとめると
投手:『 通算28勝以上(1ホールド・1セーブは0.5勝として計算) 』
野手:『 通算427安打以上 』
この通算成績以上の選手を成功とさせていただきます
あと、今回の対象選手はドラフト制度が始まった1965年以降の選手を対象としています
ドラフト制以前の自由競争時代は、有力選手が巨人などの人気チームに偏りがちだったことや、プロ野球が始まった当初の選手は成績や学歴が不正確なため、しっかりとしたデータが残っていて、選手獲得もほぼ平等なドラフト制以降の選手のみを対象としました
阪神タイガースがドラフトで指名した高校生 成功選手一覧 投手編
通算28勝以上(1ホールド・1セーブは0.5勝として計算)
※現役選手は2023年シーズン終了時点の成績
江夏豊
ドラフト年:順位 | 1966年・第1次ドラフト1位 |
出身高校 | 大阪:大阪学院高校 |
通算成績 | 試829:206勝158敗193S:防2.49 |
キャリアハイ | 1968年・試49:25勝12敗:防2.13 |
獲得タイトル | 最多勝利・2回:1968年・1973年 最優秀防御率・1回:1969年 最多奪三振・6回:1967~1972年 最優秀救援・5回:1977年・1979~1982年 最多セーブ・6回:1977年・1979~1983年 沢村賞・1回:1968年 最優秀選手・2回:1979年・1981年 最優秀投手・1回:1968年 ベストナイン・1回:1968年 |
江夏豊の主な記録
- 史上初の通算100セーブ達成
- 史上初の100勝100セーブ達成
- 史上初の全球団からセーブ達成
- 史上初の全球団から敗戦
- 史上唯一の延長戦でのノーヒットノーラン達成
- 高卒1年目で225奪三振:セリーグ記録
- シーズン401奪三振:1968年・MLB含むプロ野球歴代最多
- 1試合16奪三振:セリーグ歴代最多
工藤一彦
ドラフト年:順位 | 1974年・ドラフト2位 |
出身高校 | 茨城:土浦日大高校 |
通算成績 | 試308:66勝63敗4S:防4.04 |
キャリアハイ | 1982年・試35:11勝8敗2S:防3.00 |
仲田幸司
ドラフト年:順位 | 1983年・ドラフト3位 |
出身高校 | 沖縄:興南高校 |
通算成績 | 試335:57勝99敗4S:防4.06 |
キャリアハイ | 1992年・試35:14勝12敗1S:防2.53 |
獲得タイトル | 最多奪三振:1回 |
中込伸
ドラフト年:順位 | 1988年・ドラフト1位 |
出身高校 | 兵庫:神崎工業高校(甲府工業から転校) |
通算成績 | 試182:41勝62敗2S:防3.74 |
キャリアハイ | 1992年・試28:9勝8敗:防2.42 |
山村宏樹
ドラフト年:順位 | 1994年・ドラフト1位 |
出身高校 | 山梨:甲府工業高校 |
通算成績 | 試225:31勝44敗:2S20H:防5.01 |
キャリアハイ | 2007年・試28:6勝2敗:1S10H:防3.26 |
井川慶
ドラフト年:順位 | 1997年・ドラフト2位 |
出身高校 | 茨城:水戸商業高校 |
通算成績 | NPB:試219:93勝72敗:1S:防.3.21 MLB:試13:2勝4敗:防.6.66 |
キャリアハイ | 2003年・試29:20勝5敗:防2.80 |
獲得タイトル | 最多勝利・1回:2003年 最優秀防御率・1回:2003年 最多奪三振・3回:2002年・2004年・2006年 沢村賞・1回:2003年 最優秀選手・1回:2003年 最優秀投手・1回:2003年 ベストナイン・1回:2003年 |
藤川球児
ドラフト年:順位 | 1998年・ドラフト1位 |
出身高校 | 高知:高知商業高校 |
通算成績 | NPB:試782:60勝38敗:243S163H:防.2.08 MLB:試29:1勝1敗:2S:防.5.74 |
キャリアハイ | 2006年・試63:5勝0敗:17S30H:防0.68 |
獲得タイトル | 最多セーブ・2回:2007年・2011年 最優秀中継ぎ・2回:2005年・2006年 |
藤川球児の主な記録
- シーズン46セーブ:2007年・セリーグ最多記録
- 17試合連続ホールド:2005年・プロ野球タイ記録
- 47回2/3連続無失点 :阪神タイガース最長記録
- 開幕から登板11試合連続セーブ:2008年 ・阪神タイガース最長記録
- 38試合連続無失点:2006年・セリーグ最長記録
- 150ホールド150セーブ達成:日本プロ野球史上初
秋山拓巳
ドラフト年:順位 | 2009年・ドラフト4位 |
出身高校 | 愛媛:西条高校 |
通算成績 | 試134:49勝44敗:防3.66 |
キャリアハイ | 2017年・試25:12勝6敗:防2.99 |
藤浪晋太郎
ドラフト年:順位 | 2012年・ドラフト1位 |
出身高校 | 大阪:大阪桐蔭高校 |
通算成績 | NPB:試189:57勝54敗:6S11H:防.3.41 MLB:試64 7勝8敗 2S5H 防.7.18 |
キャリアハイ | 2015年・試28:14勝7敗:防2.40 |
獲得タイトル | 最多奪三振・1回:2015年 |
阪神タイガースがドラフトで指名した高校生 成功選手一覧 野手編
高卒で入団しプロ通算で427安打以上打った選手
藤田平
ドラフト年:順位 | 1965年・ドラフト2位 |
出身高校 | 和歌山:市立和歌山商業高校 |
通算成績 | 試2010:率286:安2064:本207:点802 |
キャリアハイ | 1981年・試107:率358:本11:点70 |
獲得タイトル | 首位打者・1回:1981年 最多安打・1回:1967年 ベストナイン・7回:1967年・1969年~1971年・1973年~1974年・1981年 ダイヤモンドグラブ・3回:1973年・1975年・1981年 |
阪神タイガース球団の生え抜き打者で初の名球会入り
掛布雅之
ドラフト年:順位 | 1973年・ドラフト6位 |
出身高校 | 千葉:習志野高校 |
通算成績 | 試1625:率292:安1656:本349:点1019 |
キャリアハイ | 1979年・試122:率327:本48:点95 |
獲得タイトル | 本塁打王・3回:1979年・1982年・1984年 打点王・1回:1982年 ベストナイン・7回:1976年~1979年・1981年・1982年・1985年 ダイヤモンドグラブ・6回:1978年・1979年・1981年~1983年・1985年 |
10打席連続四球:1984年・セリーグ記録
吉竹春樹
ドラフト年:順位 | 1978年・ドラフト外 |
出身高校 | 福岡:九州産業高校 |
通算成績 | 試1128:率261:安553:本34:点189 |
キャリアハイ | 1983年・試106:率330:本5:点19 |
新庄剛志
ドラフト年:順位 | 1988年・ドラフト5位 |
出身高校 | 福岡:西日本短大付属高校 |
通算成績 | NPB:試1411:率.254:安1309:本205 :点716 MLB:試303 :率.245:安215: 本20: 点100 |
キャリアハイ | 2004年・試123:率298:本24:点79 |
獲得タイトル | ベストナイン・3回:1993年・2000年・2004年 ゴールデングラブ・10回:1993年・1994年・1996年~2000年 2004年~2006年 |
阪神在籍時にゴールデングラブ賞7回受賞。7回は阪神タイガース歴代最多受賞
関本健太郎
ドラフト年:順位 | 1996年・ドラフト2位 |
出身高校 | 奈良:天理高校 |
通算成績 | 試1272:率278:安807:本48:点312 |
キャリアハイ | 2006年・試132:率301:本9:点33 |
二塁手での守備機会無失策804:セ・リーグ記録
濱中治
ドラフト年:順位 | 1996年・ドラフト3位 |
出身高校 | 和歌山:南部高校 |
通算成績 | 試744:率268:安580:本85:点311 |
キャリアハイ | 2006年・試139:率302:本20:点75 |
大和(前田大和)
ドラフト年:順位 | 2005年・ドラフト3位 |
出身高校 | 鹿児島:樟南高校 |
通算成績 | 試1482:率251:安937:本12:点279 |
キャリアハイ | 2014年・率264:本1:点24 |
獲得タイトル | ゴールデングラブ賞:1回・2014年 |
阪神タイガースのドラフト 高校生の指名&育成がどれだけ成功しているか まとめ
1965年にドラフト制度が始まってから2023年まで、阪神タイガースが指名し入団した高校生のうち
『 通算28勝以上(1ホールド・1セーブは0.5勝として計算) 』を達成した投手が9人
『 通算427安打以上 』を達成した野手が7人。達成者は合計で16人でした
これ、他球団の高校生と比較するとどの位置なのかを見てみましょう
第1位・福岡ソフトバンクホークス | 高卒成功選手・38人:投手15人:野手23人 |
第1位・広島東洋カープ | 高卒成功選手・38人:投手18人:野手20人 |
第3位・埼玉西武ライオンズ | 高卒成功選手・35人:投手13人:野手22人 |
第4位・読売巨人軍 | 高卒成功選手・34人:投手20人:野手14人 |
第4位・中日ドラゴンズ | 高卒成功選手・34人:投手16人:野手18人 |
第6位・東京ヤクルトスワローズ | 高卒成功選手・32人:投手15人:野手17人 |
第6位・北海道日本ハムファイターズ | 高卒成功選手・32人:投手16人:野手16人 |
第6位・横浜DeNAベイスターズ | 高卒成功選手・32人:投手15人:野手17人 |
第9位・千葉ロッテマリーンズ | 高卒成功選手・27人:投手16人:野手11人 |
第10位・オリックスバファローズ | 高卒成功選手・18人:投手9人:野手9人 |
第11位・阪神タイガース | 高卒成功選手・16人:投手9人:野手7人 |
※東北楽天ゴールデンイーグルス | 高卒成功選手・8人:投手7人:野手1人 |
※大阪近鉄バファローズ | 高卒成功選手・25人:投手15人:野手10人 |
これは最も多いソフトバンク(南海・ダイエーホークス時代を含む)の38人と比べると半分以下で、2003年に消滅した近鉄よりも少ないです
そして、2004年から参入した楽天がもう8人で半分まで迫って来ているという…
これだけ見ても、阪神タイガースの高卒育成の現状の厳しさが伺えると思います
※他球団のデータはこちらの記事にまとめています
阪神タイガースの高卒選手が他球団と圧倒的に違う『超特殊』な数字がある
今回、投手は通算28勝以上(1ホールド・1セーブは0.5勝として計算)打者は通算427安打をプロ野球での成功基準としましたが、この数字をクリアした高卒選手、阪神と他球団を比べると、阪神だけの特殊な傾向が見えてきます
まず投手ですが、通算28勝以上(1ホールド・1セーブは0.5勝として計算)をクリアした高卒投手、ドラフト3位以下の下位指名でこの数字をクリアした投手、阪神の歴史で秋山拓巳投手ただひとりです
阪神は高卒下位指名の投手も活躍しているイメージがありますが、数字で見ると秋山選手ひとりだけなんですよね。これは全球団の中で阪神だけで、2004年からドラフト参加の楽天でさえ3人いることを考えると(菊池保則投手4位・辛島航投手6位・今野龍太投手9位)異常な少なさだと思います
また、打者の方では、高卒のドラフト1位打者で427安打を打った選手がひとりもいないのは楽天以外だと阪神だけです
阪神タイガースの歴史上、高校生のドラフト1位打者で427安打以上打った選手は今までにひとりもいません
これはなぜなのか?
実は阪神タイガース、今までのドラフトで高校生野手を1位で獲得したの、たった4人だけなんです
2005年から2008年まであった分離ドラフトでの高校生ドラフトで、高濱卓也選手と野原将志選手という二人の高校生野手の1位指名はありましたが、これ以外の通常のドラフトでは1991年の大阪桐蔭・萩原誠選手と1997年の智辯和歌山・中谷仁選手、たったこの2人だけしか高校生野手のドラフト1位はいません
清原和博選手や松井秀喜選手、最近では高松商業の浅野翔吾選手など、高校生野手を1位指名はしているもののクジで外れてしまうケースもあるので、高校生野手の1位指名を避けてるという事はないのですが、それでも他球団に比べると異常なほど少ないです
この辺りも、他球団に比べて阪神で高卒野手が実績を残せていない理由のひとつかもしれませんね
ちなみに、この記事を書いている今日の阪神のスタメンはこれ
1・近本光司(大社)/2・中野拓夢(大社)/3・森下翔太(大)/4・大山悠輔(大)/5・佐藤輝明(大)/
6・島田海吏(大)/7・梅野隆太郎(大)/8・木浪聖也(大)/9・伊藤将司(大社)
まあ見事に全員、大卒&社会人出身です笑
これが必ずしも悪い訳ではなく、チーム戦略として即戦力を中心にドラフト戦略を組むのも全然アリだとは思いますが、他球団に比べると、阪神はその傾向がかなり強いのかもしれませんね
自分の応援するチームではどの選手が活躍してくれても嬉しいですし、その選手が高卒だろうが大卒だろうが関係ありません
ただ、他球団で高卒の若い選手が1軍で躍動する姿を見ると、羨ましくて、自分の応援するチームでもこんな高卒選手が出てきてくれればなと思うものです
この記事のデータを見てがっかりした阪神ファンの方もいるかもしれませんが…阪神にも高卒の若手有望株はたくさんいますし、これからの高卒若手の台頭に期待していきましょう♪